とんかつ一切れ
仕事終わりに帰りの連絡をした
今日は家に帰ってもご飯が無いらしい
食べてくるか買ってくるかして来いと言われた
いつもなら適当なものを買って帰るか袋麺を作って食べるところなのだが
なぜか今日だけは違った
「市川食堂」に行こう
なぜか『食べて来て』の文字を見た瞬間
心が決まっていた
市川食堂は比較的大盛りなお店で
以前チキンカツを頼んだら
子どものコブシ大のカツが6つも出てきた
味も美味しいしまた行きたいと思っていたお店だ
何を食べようかウキウキしながら電車を乗り換えていると
千鳥足の不審なおじさんがやってきた
おじさんはつり革に全体重を預けたと思うと
ぐわんぐわん踊るように揺れ始めた
寝るのは良いけどもっと大人しく寝てくれないか？
周りの人に迷惑をかけながら全く起きないおじさん
私の目の前のニイちゃんが苛立ち始めている
このままではケンカが始まってしまうじゃないか！
イイぞ！ヤレヤレ！！
あと1回ぶつかってたらぶん殴っていたであろう状況で
おじさんが降りる駅に着いた
おじさん降りたらコケたらしい
無事に帰れてればいいけど。
踊るおじさんが降りたら少年に絡む3人のおじさん
『坊や、汗かいてるね。暑いの？』
『あんなおじさんになったらダメだぞ』
なんて言ってるあなたたちは大丈夫なのか！？
素直な少年は
『少林寺拳法をやっているからです』
とハッキリ答えた
少年のハッキリした返事に気を良くしたおじさんたち
『すごいねぇ！』
『あのおじさんにイラついても素人に手を出したらダメだぞ』
『素人の相手したら破門だぞ』
『大澤先生(仮)って知ってるか？』
『えらいぞ！』
などとさらにまくし立てる
少年はどうしたものかともじもじしているような気配をしていたが
ちょうど降りる駅に着いたようで
『ここで降りるので！ありがとうございました！』
と元気よく逃げて行った
まぁ、知らない人に無条件に褒められて悪い気もしていなそうだった
から大丈夫だろう
そんなこんなでいろんなおじさんたちがいたが市川に到着
市川食堂は駅とつながっているのですぐに到着
古めかしいがおいしそうな写真がたくさん載った旗？は相変わらずだ
カレーの写真の下に『大盛りは危険です』と書かれているから
たくさん食べるのが得意な人は挑戦して感想を
聞かせてくれてもいいし聞かせてくれなくてもいいよ？
から揚げ、ハムエッグ+から揚げ、スタミナ焼き…
どれも捨てがたいなぁと思いながら
『とんかつ定食』が目に留まる
チキンカツ定食やカツどん、親子丼なんかも眺めたが
やっぱりとんかつ定食に戻っている
そんな時は自分に正直になろうってことでとんかつ定食７６０円也
カウンターに陣取ってしばし待つ
隣の大学生ぐらいのお兄さんはから揚げ定食かな？
おいしそうだな～、とんかつ一切れとトレードしてくれないかな～
そんな妄想をするが人見知りな私はとても口に出せなかった
知り合いと来ていればトレードできたのに！
隣のから揚げをみてそわそわしていると私のとんかつがやってきた！
やった！うまそう！！
いただきます！！！
胃がびっくりしないようにまずはお味噌汁からいただく
熱い！熱すぎるぞ！！
でも、おいしい！
お味噌が踊るぐらい熱い味噌汁だが味は好きだ
次はキャベツ、次はご飯とカツを焦らしながら攻めていく
それじゃあ、いただきますか
薄めの衣に厚いお肉！
そして衣がはがれない！！
サクッっとした衣と豚肉のうまみがマッチしてる！！
これはいいとんかつですね
一心不乱に食べ進めること半分
やっぱりカツは油がきついかなぁなんて思ってきたり・・・
それでもご飯とお味噌汁、柴漬けが居れば大丈夫さ
・・・頑張って食べたけど一切れ残ってしまった
そこで私は見ず知らずの大学生風のお兄さんに声をかけるのであった
『良かったら食べる？』
見ず知らずの！男の！食べかけの！！とんかつを差し出そうとしたのである
『いやいやいやいや！！いらないですいらないです！！！』
確かに片側から食べ進めているので触れてもいない一切れだったが
初対面の人間からカツを勧められても断るに決まってる
私もおなかが膨れて心も大きくなっていたようだ
トレードは言えなくても残り物なら話しかけることができた
いや、でももったいないからどうせなら食べてもらったほうが良いよね？
５年前ならいざ知らず、今の私では食べきることができなかったので
残念ながらとんかつ一切れはあきらめることにした
この記事書いてる時に昔食べたのがチキンカツだったのを思い出して
市川食堂でカツしか食べてないことに愕然とした
次はハムエッグ食べたい！
へばな！
